各界のプロフェッショナルな方々との対談コーナーです。
不定期で更新していく予定なので、お楽しみに!
第1講義 遠藤諭氏(月刊アスキー編集主幹)×ナカタニ.D
2003年、月刊アスキーにて「マンガ・パソコンの作り方」を連載しました(ムック「CPUはなぜ速くなるのか」に第1〜5回までを収録)。月刊アスキー編集主幹の遠藤諭氏との対談です。
2004年1月10日
日本を侵す毒
[ナカタニ D.] 月刊アスキーで、「マンガ・パソコンの作り方」を一年間やらせていたいて、2003年12月号「ケース編」の取材でソルダムさんに取材に行きました。そこで語られたことや、ソルダムさんのホームページに書かれていたことが、そうとう僕にとってキーになったんですよ。
CPU,HDD,マザーボード,メモリ,ビデオカードの仕組みを基礎から解説。自作必携! 製造工程を紹介するナカタニ D.氏のマンガを収録し,大阪万博当時の情報も盛りだくさん! 月刊アスキー編集部/編 アスキー 980円+税
[遠藤] 星野社長とは会えた?
[ナカタニ D.] 星野社長とはお会いできなかったんですけれども、ホームページを見ました。お話は常務取締役の澤口さんにしていただきました。その中で、「日本の企業は、価格を決める部分と品質を管理する部分が別だ」と。価格は勝手にリサーチして勝手に設定するけれども、品質はまったく別で。「これぐらいの金額でナントカしてくれ」と言われてしまう。
品質が世界1位なのは当たり前だったんですけれども、今、不景気になったことによって、「お金がすべて」ということがバレてしまったというところが、「なるほどなあ!」と。
[遠藤] たしかに、いかにも星野金属らしい。
[ナカタニ D.] 僕は今回本を3冊同時に出したんですけれども、そのときにモロにそれを感じたんですよね。自分がホンマに本が好きですから、本の適正価格にものすごくこだわっているんです。自分の印税を減らしてでも1000円チョイくらいにしてほしいと。でも出版社としてはチョット高めの値段設定を曲げられないらしいんです。おそらく僕のコレまでに出した本のデータや市場を検討した結果の値段なんでしょうが……。担当の編集の人は本当に一生懸命戦ってくれたのですが、まったく別の理由で価格が決まってしまう。今はブックオフがあります。みんな、お金は限りがあるからブックオフを併用する。初日に買ってナンボで売って……ということをします。ブックオフにいくらで並ぶと分かっているわけですけれども、それにちょっと上乗せして新刊を買えたほうが僕らはいいわけです。
[遠藤] 原価というか適性価格を無視した値付けが行なわれていると。星野金属は、そのあたり体で覚えた会社のようですからね。もともと、初代PC-9801のケースなんか作っていたケース屋さんなんだけど、なかなか国内で作っていたのでは台湾のメーカーに価格で勝負できなくなった。そしたら、群馬県の太田市というのは「冷却」の本場なんだそうです。そこで、特殊な加工技術を買ってCPUクーラーを作ることにした。それで、有名になったんですよ。
ところが、このCPUクーラーでも台湾メーカーが出てきて、最後は一個何円とかそういう世界になっちゃった。もうダメだと。カネも全然なくなってね、やけくそでしゃぶしゃぶ食いに行ったりしたらしいですが。で、原点に戻ってパソコンのケースを作ろうという話になった。実は、太田市というのは、アルミ加工で有名な土地なんだって。木下恵介監督の映画で「二十四の瞳」というのがありますが、それに「花柄の弁当箱」というのが出てくるらしいんです。ひょっとしたら原作にも出てくるのか? とにかく、それを作ったのが星野金属のケースを加工している清田アルマイトという会社なんだそうです。二十四の瞳と、秋葉原の自作野郎が使っているのは素性が同じというわけ。
澤口さんだったと思うんだけど、記憶に残っているのが、パソコンのケースを久々に作ってみたけれど、直接販売するルートがない。暮れの押し迫ったときにようやくケースができた。でも、そんな時期に問屋を通してもルートがないってわけで、アキバにトラックで乗り付けてショップに置いてくださいと頼み込んだそうなんだよね。ところが、どのお店に行ってもなかなか置いてくれない。「マッチ売りの少女みたいでした」と言うわけ。12月の押し迫って暮れなずむアキバの裏通りをね、一人台車を押しながら売り歩いたんだろうね。そうしたら、なんと翌年からジリジリと売れてきて、アルミケースもヒットしてキューブ型も大ヒットして、たぶん、国内のパソコンのシェアは1%は確実にありますよね。あるいは、もっとあるのか? 
でもまあね、まさに日本の企業を毒しているのは「マーケッタビリティ」と「プロダクティビティ」だと思う。その2つの「ティビティ」から脱却しないとダメなんだよね。だって、「売りやすいもの」(マーケッタビリティが高い)、「作りやすいもの」(プロダクティビティが高い)をやっていたら誰でもできちゃうから貧乏競争になっちゃう。ちゃんと商品があって、それの実現方法とか販売方法とかを考えるときに使う言葉がこの2つであって、それが本質だと取り違えて、マーケッタビリティとプロダクティビティを真面目に声高に言っている経営者がいるとその会社は終わると思う。高くてもアルミで一からやろうとマジメに考えた。とはいいながら、一出版社の関係者としては本の値段というのはなかなか難しい、やむをえない部分もあったりするわけで(笑)。
[ナカタニ D.] 値段もそうですしね、宣伝もなんですね。今回3冊の本を出して、それぞれ別の会社だけれどもお互いの宣伝をしてもらったんですよ。単行本のオビに別の本の広告を入れたりして。これだけ世間で「本が売れない」と言うんだったら、一冊でも手に取ってもらえたらそれがチャンスじゃないですか。あとの2冊を、垣根を取っ払ってでも売れるようにということです。みんな各々の担当の編集が思い入れてやってくれました。一人一人が本気で作る気になったら多少次に続くムーブメントが作れるというのを全員が確認できた気がしました。みなさん本当にプライドを持ってやってくださいました。
セクハラの値段
[遠藤] 今回は3冊同時に出たと。サイン会もやるんですよね?
漫画セクハラ専門学校

小学館の月刊IKKI連載をまとめたもの。セクハラ事例について,“デー先生”が解説する。ちょっとエッチな絵でドキドキしつつ,セクハラという概念が産み出された現代を知る。 小学館 857円+税
[ナカタニ D.] そうです。3社協同で。
[遠藤] 小学館のIKKIの連載「セクハラ専門学校」ももう、本になったんですか?
[ナカタニ D.] はい。日常のセクハラ、家庭内のセクハラも。
[遠藤] 会社で、自分のパソコンの画面に裸を出していてもダメなんだよね。
[ナカタニ D.] そうですね。セクハラには環境型と対価型の2種類があるそうでして。環境型というのは、パソコンの画像やエロポスター、ヌードカレンダーもダメなんです。

ビールメーカーも取材しましたが、今はヌードカレンダーなどはもう作っていないそうです。
[遠藤] 結論からするとなんなんですか?
[ナカタニ D.] セクハラに関して言ったら、セクシャルハラスメントのハラスメントにばっかり目が行ってしまっていて、“セクシャル”に目が行っていない。セクシーもエロもポルノも全部一緒になっている。これから我々はセクシャルコミュニケーションというのを探していかねばならないのではないかという問題提起をしていこうと。もともとセクハラも昔はコミュニケーションのひとつだったわけですから。「髪の毛を切ったね」もグレーゾーンに入ってしまう。でも昔は、髪の毛を切ったのに気付かなかったことが問題だったわけですよね。
[遠藤] 気が付かないヤツが罪だったのに……。
[ナカタニ D.] そうです。
[遠藤] 結論を先に言うと、日本のすべての企業の総務部必携の本てわけですね。
[ナカタニ D.] そうですね。セクハラの値段も調べてみたんです。
[遠藤] セクハラの値段!
[ナカタニ D.] 賠償額が10万円から3000万円までありまして。誰がどういうことをしていくらになったと。
[遠藤] 雑誌編集長はあるの?
[ナカタニ D.] 出版社もありますよ。
[遠藤] ホントだ! 165万円払ったのか。単行本一冊作れるなあ。じゃあ、この本を読んでいるとセクハラになるんじゃないの?
[ナカタニ D.] ハハハ。先を見越して、僕のマンガを読んでいるシーンがありまして、「この人のマンガは環境型セクハラだ」と言って怒っていますね。
[遠藤] ナカタニさんの絵って、腰の肉の付き方というか、大腿筋とか腸腰筋とかとかいろいろあって、それをはっきり強調していて、衣服があろうがなかろうが、的確にエッチにというか正確に表現するのって、バロン吉本以来ですよね。マジメにそこをやっている人っていそうでいない。この、スクリーントーンでパンストを……いいのかなオレ、こんな事言って。でもすごく重要なことですが。表現として。
[ナカタニ D.] ありがとうございます。バロン吉本先生以来と言って頂いて。
[遠藤] OLさんのいるところで生活されていた経験がある? でないとこれは描けないよねえ。
上司と部下の職場系心理学

マンガでわかる 上司と部下の職場系心理学 心理カウンセラーで,日本メンタルヘルス協会代表でもある衛藤信之氏が監修。ダメな部下とイヤな上司,両方の問題を解決する糸口となる一冊。 衛藤信之/監修 実業之日本社 1500円
[ナカタニ D.] そうですね。大学卒業後塗料メーカーで会社員をしていました。そういう意味ではこの「上司と部下の職場系心理学」のほうがテーマが合っていますね。なぜ職場で上司と部下が対立するか、なぜ腹が立つのかを分かりやすく描いています。たとえば、円が二つあった場合に、この円と弧の円のどっちに目がいくかというと、人間の目は足りないほうに目がいく。我々はここに腹を立てている。
[遠藤] 腹を立てている! 「オマエはここが足りん!」と。
[ナカタニ D.] 足りんとこばっかり見るから煙い上司になる。人間関係を構築しようと思ったら、足りんところも言わなければいけないけれども足りるところを言って、自分を認めてくれる人のほうが信頼ができるというわけです。
[遠藤] 上司と部下の関係では、リチャード・S.ワーマンていう人が書いた「それは情報ではない」というのがあるんですけれどもね。ジョブズが心酔してしまっていて。上司が何種類、部下が何種類でこの組み合わせでどうこうという。なかなか的を射ていて。上司と部下というジャンルはありますよね。
[ナカタニ D.] ここまでマンガがベースのものは多分ないですね。そして、作家自身がカウンセラーというのもまだないです。僕、これを描くときに、もといた会社に取材に行きました。僕はバブル世代だったので、その世代を嫌っている人に、「僕のどこがきらいでした?」と聞いて、会社に残ったバブル世代は今どうしているかというお話をおうかがいして、僕が会社に残ったらこんな感じでこんな対立をしたんじゃないかなと。そうすると、高度成長期時代の人たちの成功体験と、それを壊したがる僕らという構図もあって。
[遠藤] 上司向けの本ですかね?
[ナカタニ D.] 部下の人にも読んでもらいたいですね。本屋さんでは、コーチングのリーダー向けというコーナーに置かれていますけれど(笑)。「人材教育」という本に連載していたんです。日本能率協会という研修会社が出している本です。監修してもらっているのが、僕の心理学のボスで、日本メンタルヘルス協会の代表をされている衛藤信之先生です。
[遠藤] じゃあ、これは? 「ハレハレなおくん」
ハレハレなおくん

ハレハレなおくん 1 30年ほど前の神戸で,服役中のおとーさんをおかーさんと一緒に待つなおくんの話。ハタチを過ぎた子供達が闊歩する現代日本とは違い,マトモな大人がマトモに物を言うマンガ。竹書房 590円
[ナカタニ D.] 僕の子供の頃の話ですね。
[遠藤] なんで安藤昇さんがオビに登場してるの?
[ナカタニ D.] 安藤昇先生って、任侠映画の印象があるかもしれませんけれども、安藤先生が書かかれていらっしゃる本とか、最近作られたVシネマなどではやくざの世界が舞台になっているといっても、その世界観は実に暖かいものなんですよね。僕の身内にもその世界の人がいたんです。確かに怒ると手も付けられず、過剰なまでに筋を通す人でしたが、日常はとてもほのぼのとした面白い人でした。ですから僕のマンガも、やくざの人達が多数登場しますが、切ったはったの任侠ものではありません。入れ墨の絵がヘタだとけなしあったり、子供に対して「大人になって強い男になると入れ墨が自然に浮き出てくる」と極端なウソを平気でつくキャラクター達が登場します。指がないおじさんのエピソードなどは、「大人は命がけで仕事をしているから指の一本や二本くらいなくなっても平気」と、子供に命をかけられる仕事を見つけるのだと諭したりします。
舞台は昭和43年という現代と比べると、とてものほほんとしていた時代です。でも、のほほんとしながらも、万博に向けて世の中がなんとはなしに助走が付いていく人々の様を、「やくざと一般人」という構図ではなく「大人と子供」という図式で描きました。大人がちゃんと大人で、子供が安心して子供でいられた時代、この国の人たちがまだちゃんと信じるものがあった時代だからこそ、セリフひとつひとつに重みを持たせることができると思っています。安藤先生は僕のマンガのそういった世界観にとても影響を与えて下さった方だからです。
[遠藤] 自伝的なわけだ。
[ナカタニ D.] 自分の生い立ちがマンガっぽい設定なので。ホンマかウソかワカラン中途半端なところで読んで頂いたらと思います。今大人になってしまったヤツに、昔大人にこんな事聞かされたよね、思い出さない? ということです。もう1回リピートしたい。ズルいことし始めているぜ俺らは、と。
本が売れない10の理由
[遠藤] そして、この3冊いっぺんにサイン会をやる?
[ナカタニ D.] そうです。宣伝で。年末も編集の人とポップを持って本屋さん回ったんですけれども。マンガ家と編集者の人って(もちろんすべてではありませんが)実は心の中でお互いをあまり信用していないというヘンな図式があったりするんですけれども、本が売れない今の時代だからこそ、逆に本当に信頼しあえる関係が作れるんじゃないでしょうか?
[遠藤]
僕ね、本が売れない10の理由というのを考えたんですよ。あんまりショボい話なんで、それをネタにして原稿も書いていないんですが。まあ、挙げてみましょうか。
本が売れない10の理由
1. ブックオフで中古で読むようになった
2. 携帯電話にお金をとられた
3. インターネットに時間を取られた
4. 駅周辺での読み捨て雑誌の販売
5. マンガ喫茶の流行
6. 公立図書館が人気本だけ大量購入
7. 万引き問題
8. デジタル万引き問題
9. 戦争報道・少年犯罪・拉致被害者(現実がフィクションを超えた)
10. いい本・いい記事がない
こんな感じで。きっとね、こういう言い訳をしている人、多いですよね。コレ、言い訳にいいですよ(笑)。最後はまあ、オチなんだけどさ。言われる側はイヤになるだろうねえ。マンガはどうなんですか?
[ナカタニ D.] 当てはまると思います。売れている本だけ売れているんですよ。結局、内容以前に数字のほうが一人歩きしますからね。
[遠藤] おー、数字ね、それはちょっと理由の中に入れたくなるね。
[ナカタニ D.] 必ず前回出した本の話になるんですよ。「ナカタニさんがこないだ出した本は何部刷って何パーセント売れたとか」。
[遠藤] あー、なるほどね。
[ナカタニ D.] 13年もかけて書き下ろした本に対して数字で切り替えされてもねえ。数字で言うんだったら、その中に掲載するためだけに作ったコンドームなんかは10万箱売れたんですけどね(笑)。
東京都立不安病院

[遠藤] 「東京都立不安」は、私の人生の座右書です。分かってないですねー。
[ナカタニ D.] そんなに僕のマンガを売りたくないのかな、と悲しくなる時があります(笑)。
[遠藤] 必要なのは? プライド? たとえば、台湾にですね、「誠品書店」(せいひんしょてん)というのがある。5年前に気が付いたんですけれど、ものすごいオシャレ。板張りで、棚もシックで照明も間接照明で。洋書というか、雑誌に関しては7000冊あると言われていて、世界的に見ても充実度は最高クラス。立ち読みも自由なんだよね。台湾中に50店ある。台北駅前のデパートの中にある店舗なんか、ほどよいところに椅子まで置いてある。アメリカはそういう文化があるんですが、そんなもんじゃない。立ち読み自由で雰囲気良くてカフェもあって店員もよい。でもずっと赤字なんです。そして異業種参入なんです。ボイラー屋さんで、いったん死にかけたらしくって、それでやりたいことをやるぞと本屋さんをはじめた。その社長は自分のやっている書店を「図書館」と言っているんです。AcerとかASUSTeKとかの社長さんが出資して、増資しながら走っている。こんな構造で成立しているのは、プライドだと思う。
台湾の文芸誌はメチャメチャカッコイイ。シックな本屋さんのイメージとピッタリなんだけど、装丁のデザインもかっこいい。あれだけかっこよかったらカッコイイ文章を書こうかなと思うでしょう。あれだけカッコイイ本屋だったら本買おうかなと。ベクトルというか上昇というかが必要なわけですよね。でもさすがにそのままではやっていけないんで、誠品ブランドで服飾関係に広げていったりしています。もうすぐ黒字化するんじゃないかと言われている。
本って、感動したいとか、精神的に改まるというか、向上しようと言う動機があるじゃないですか。それに必要なのは器なんだよね。文芸誌だったらいい文学を書こうかなとと思うプラスのベクトルが必要。でもそこには延々と投資し続ける金持ちのオヤジがいるわけだけれど、彼らだってそのプラスのベクトルの上で金出しているわけ。誠品書店は、門前カルチャー露天市みたいになっててイベントもよくやっている。本屋さんの前がアーチスト系の露天になっているんです。
[ナカタニ D.] ソーホーっぽいんですか?
[遠藤] ニューヨークのですか? たしかに、それに中国の伝統のしっかりした木の作りをはめ込んだ感じ。それはプライドということじゃないですか。無意味なプライドではなくて。これから台湾はどうしたらいいのか? メインランド中国が国際社会にどんどん出てくるときに、自分たちはいままで以上に頑張らないといけないという、ツッパリがある。マンガの世界とかもあるでしょう。そういうの。
[ナカタニ D.] 描き手がもっと日常生活を面白がったほうがいいと思います。僕は今年40歳になるんですけど、人間40歳になると、方向性も決まってくるし、読む人も決まってくる。また、それに応えようということになってきて、自分の限界を自分で決めそうになってしまう。だから、自分を言い訳できないところに持っていったほうがいいんじゃないかと僕は思っています。情熱を持ったすごいマンガ家の方々も大勢いますが、読んでいるとコイツ、マンガのことキライなんじゃないかなと思う作品も目に付きます。若い頃は周りの友達が嫌がっても自分の描いたものを見せたくて見せたくてしょうがなかったはずなのに。
同じ志で東京に来てマンガ家をやっていた友人達も、何人かが筆を折ってしまいましたが、田舎に帰るときに言う台詞が決まっている。「これでもう家賃の心配しなくていい」って。オマエな、家賃ごときに負けるな! と言いたい気分。
[遠藤] 家賃に負けるな! いいですねー!
[ナカタニ D.] 大好きだったものを職業にしてしまうと、大好きでい続けるのが難しいなあと感じる時があります。いろんな意味で。40歳を迎えて本当にそう思うんです。でもさっきの、「いい本・いい記事がない」ではないですが、20代の頃と同じテンションでマンガを好きで人に読んでもらいたくて読んでもらいたくて仕方がない作品を創り続けるためにも、自分の人生を一本調子にしないよう、これからもわざといろんな爆弾を仕掛けていこうと思っています(笑)。
[遠藤] 東京都立不安病院ではコンドームを作った。それじゃ、次は何を作るか? 何かをしてくれる人を求めていますからねぇ、大衆というのは。もっといえば、いま韓国や台湾は国力を上げて、ものすごいお金をかけて国がコンテンツを支援をしていますよね。台湾の場合はニ兆双星といって、“二兆”は半導体と液晶パネル、“双星”はデジタルコンテンツとバイオテクノロジーをやろうと明確に宣言している。これからの台湾は国力をあげて「オタクにかける」と言っているわけ。だからどうすりゃいいのかという議論をしているんですね。
日本なんかさ、ドラえもんがアジアに進出するときに、一度でも手助けしたことがあるのか? 若い人たちにお金上げちゃうとか、つぶれそうなマンガの出版社にお金上げちゃうとかね。マンガ家優遇税制とかやればいいんです。などと話をしてきましたが、月刊アスキーの連載も気が付くとあと1回なのですねぇ! また、何かの形でお仕事をぜひお願いしたいと思います。
[ナカタニ D.] 日本の最先端のもの作りを生で見れたことは本当に勉強になりました。こういったチャンスを与えて頂いてありがとうございました。